ホアキンを抱きしめたい
とにかく、ホアキンがすばらしい。
退役軍人で元FBIのジョー(ホアキン・フェニックス)。
かつてのトラウマからPTSDと自殺念慮に悩まされ、職を辞してからは行方不明の少女を捜して生計を立てつつ、母親とふたりで暮らしている。
あるとき上院議員の娘の救出依頼を受けたことから、ジョーの人生はがらりと変わる。
すべてを失い、そしてかすかな希望に出会う。
さぞ、さぞさぞ美しく鍛えあげられていたであろう肉体は徐々に崩れてきているが、古傷もあいまってなお力強いし、だらしなく伸びた髪をうしろで束ねている姿は色気があるし、髭もじゃから時折のぞく笑みは"仕事中”とはうってかわって愛らしい。
こういう役はホアキンみたいな狂気じみた俳優でないとできないと思ってしまう。
リン・ラムジー監督は、『少年は残酷な弓を射る』しか観ていないけど、作品のもつ空気が好きだった。
そして今作がなぜかPTA作品だと思い込んでた(『ザ・マスター』にひっぱられすぎ)こともひっくるめて、きっと自分が好きな雰囲気の作品だとは思ってた。
音楽も『少年は〜』と同じくジョニー・グリーンウッドだし、暗くてひりひりするかんじが絶妙。
少女と影のある粗暴な男コンビって、映画の世界だとなぜこんなにも魅力的なんですかね。『レオン』しかり『タクシー・ドライバー』しかり。
印象的なのは、侵入者といっしょに歌を歌うシーン。
生き絶える間際に手を握り合う描写も素晴らしかった。
ジョーのあたたかな部分というか、弱い部分がみえた気がした。
90分間でほかにどうしようもないくらい完成系。
今年のベストに躍り出ましたね。
サントラを買ったんだけど、家で聴いてもリラックスできないし、出勤時に聴いたら会社行きたくなくなるし、いつ聴けばいいかわからなくて結局宇多田ヒカルの新譜ばっかり聴いてます。